2020/04/21

わたしたちはお互いに知らなかった。それゆえに知っていた、というずるいいいかたも、ここでは許されない。花束にも似た。束ねられた花々は、しぜん、生きた。成り行き上そうなったように。ここで別れて、またいつか束ねられるだろう。約束の手のかたちをしている花が、うなだれたひたいの隅で、予感を養っている。
花に名を連ねる。わたしも、いくつかの花を騙り、いいように転がされてきた。ここで花は千々に、咲くはずだった色の花も、眼下に捨てられている。小さくなった字を拾って譬える花もいくつかあった。たとえば躑躅。免罪されてある国家に、花はもう届かない。