記憶とその家

思い出すと寝ていた。あの家の家具の配置が上から被さってくる。頭のあるほうが北なら、ここは帯広。いまの家でも北向きに寝ていたのかもしれない。仰向けに寝ているから、目は閉じている。方向が定まらないから、いまはまだ夜。思い出すと階段を上って、ここに寝ていた。夢の中で、だれかが扉を叩いて、起きた。あれは夢だったのだろうか。家で寝ている夢だったから、わからない。わかりあえないなら、記憶のはなしをする。家についての記憶。どこからでも必ず家に帰れていたころの記憶のこと。帰り道でよく石蹴り遊びをしていたころ。記憶の中では、まだあの家に住んでいる。あとで振り返って、なかったことにするかもしれないこと。